2020年1月7日火曜日

解像度の話

当事者になると感じられる物事が増える。
練度が上がれば上がるほど、感じとれることはどんどん増える。
その事をパンや農業を通じて実感している。

腕のいいパン職人ほど、
生地を触った時に得られる情報量は多い。
触っただけでその生地の焼き上がりをイメージ出来るようになる。(僕が出来るって話ではないですよ)
農業も同様に、
土を見て、葉を見て、
そこから得られる情報量は、熟練の農家ほど多い。

その時、パン職人や農家が感じ取っている情報は、
当事者になる前には得られるとも思っていなかったことまで含まれている。
生地に含まれる水分の量とか、
植物に不足している微量ミネラルの種類とか、
当事者になる前にはそんな違いがあることを想像すらしていないようなことも。

当事者になって、感じることが増えるということは、
その分野を見る解像度が上がると言い換えられるだろう。

アナログテレビからハイビジョン、4kへと、
解像度が上がっていく様のように、
ぼんやり見るより、鮮明に見ることができるほうが、
物事が持つ楽しさや美しさはより豊かに感じられるようになる。

だから興味があることや、
こういうYouTubeとかテレビ番組とか、
つい見ちゃうんだよね〜ってものがあれば、
思い切って当事者になってみると、
その分野がよりはっきりと見えるようになり、
楽しみどころが増えるはず。

構造をより深く理解できたり、
言語化できることが増えたりするのがいいんだろうな。


このところそんなことを考えていたので、
年末、芽吹音農園の潤樹から
「農業漫才コンビやりませんか?」
と誘ってもらった時、
二つ返事でやろう!と答えた。
漫才自分でやるようにしたら、
元々好きなお笑いがより面白く見られるようになりそうだから。

というわけで、今ネタつくってます。

2019年11月19日火曜日

FKDトークライブの内容について

今更ですが、FKDのトークライブについて、お話ししたかったことをまとめます。
長文になっちゃいました。

まずは聞きに来てくださった皆さま、ありがとうございました。
よく知るお顔が見えたので、固くならずに自然に話せました。

内容は、
僕らの行動理念は、
〈自分たちが暮らしたい社会へ向かって、楽しみながら日常を変えていく〉
というもので、
「暮らしたい社会」とはどんなものか、
日常をどう変えたらより楽しくそこへ向かえるか、
を話し合いながら行動を決めている、みたいなことをお話ししました。

パンも農業も学校給食も、僕らが暮らしたい社会へ向かうための手段であり、目的ではありません。
だから、農家なの?パン屋なの?と聞かれると、どっちもNOだし同時にYESでもある。
自己紹介する時は、説明が長くなるから手っ取り早くどちらかで名乗ることもあります。
でもどちらかというとNO寄りの感覚です。
職業を具体的な単語で定めると、その単語が持つイメージに縛られる気がするから。自分を農家かパン屋だと決めきっていたら、「おでん屋をやろう」とは思えなかったかもしれない。
特に農家は、農家という言葉の持つイメージに縛られやすい気がします。職業ではなく生き方として農家を選ぶ人が多いことも一因かなぁと思いますが。
農的な生き方それ自体が目的の場合もあるでしょうけれど、
農業を通じて何かを変えたいという想いがある場合、
田畑で汗を流すこと以外にも、実現したい想いへ近づく手段は沢山あるはずで、
それを見つけられたほうが、より田畑での作業も楽しくなることもある。
生産は消費によって完結します。
そこまで自分の手と目が届く手段を持つことが、農業を豊かな気持ちで営む上で大切なことだと僕は思います。

つまり一言でまとめると、誰か南摩で農業やりながらラーメン屋やってください。
って話でした!

2019年10月30日水曜日

台風19号を経験して、これからの農業について思うこと。

こんな大きな災害は初めてだった。
ここまでになるとは誰も想像できなかったんじゃないだろうか。
復興にはまだまだ時間も人手もお金も要る。
それぞれがそれぞれに出来ることをやる、それに尽きる。

【農業について】
時代の変化やテクノロジーの発展がとにかく目まぐるしくて、様々な業種で、
今まで続けてきた形と、数年後にあるべき形が全く異なるだろうと想像できてしまう。
農業に関してもそうで、
僕はこれからの農業は
・省人力、超高効率の収益型農業
・コミュニティ運営の場としての交流型農業
の2極どちらかに寄っていくのではと想像している。
どちらにもテクノロジーが欠かせないが、使うテクノロジーが少し違う。

前者は、自動運転トラクターやドローン、IoT農業機械をフル活用して、
なるべく人の手を介さずに済むように、作業を最適化させる。
これなら担い手が高齢でも大規模な農地を管理できるようになるだろう。
初期の投資こそ大きくなるが、収益性が高ければ後継者も今よりずっと付きやすくなるはずで、
長く持続可能な営農が可能になるはずだ。

と、今回の被災までは思っていた。
被災を経た今、実はそれは危うい仕組みだったんだと考えている。
この方法は、設備を整える投資が大きいが、それを整えることで得られるメリットもそれ以上に大きいから成り立つ。
しかし、今回の台風のような災害がいつまたどこに来るかわからない状況では、
せっかく整えた設備を、投資分を回収する前に失う危険は決して無視できない。
失えば、その地の営農は破綻するだろう。
一度の大災害で、多くの田畑は荒れ地に変わる。

ならば、これからの農業が進むべき道は、後者の
「コミュニティ運営の場としての交流型農業」なのではないだろうか。
農地を一軒の農家が所有するのではなく、地域住民みんなで少しずつ担う。
作物を得るためにその時々に必要な作業をプロの農家が見極めて、
実際の作業は地域内の出来る人が出来る分だけやる。
作業者は、やった分だけ、作業報酬をもらう。
その作業の発注や受注のやりとり、どのように作業すればいいかを説明するための動画などのコンテンツ、作業報酬を支払うための決済の仕組み、
それらにテクノロジーを取り入れて、滑らかに回していければ、
誰も負担を感じずに、楽しく、経済的にも潤いながら、
持続可能な農の形が作れるのではないだろうか。
作業報酬を高単価にするために、農産加工も取り入れるべきだと思う。
その加工作業も、地域内で発注、受注できたらなお良い。

作業を最適化させる点は、前述の極と同じだが、
前途は人の手以外を機械に頼ったのに対し、
こちらは人の手以外も余っている人の手に頼る。
地域内に眠っているエネルギー=ちょっと空いた時間、ついでにやれる移動、など
を農へと最適化する。
もともとあるものをソフトテクノロジーとコミュニケーションによって滑らかに回すだけなので、
大災害があっても、ネットと人の手さえ無事なら復活できる。
農を通して地域内の人々の交流も生み出せる。
《シェアリング農業》の具現化が、
これからの農業の、そして田舎のコミュニティの、
持続可能性を高める解なのではないだろうか。

2019年10月15日火曜日

台風19号被害について。

一本杉農園は、おでん用の人参と大根を育てていた畑が、
すぐ近くに流れる南摩川の堤防が決壊して流されてしまいました。

でも、それだけです。
お店やスタッフのみんな、家族には直接の被害はなく、無事です。
今週も木曜日からいつも通り営業いたします。 

ただ、鹿沼市、特に一本杉からすぐ近くの粟野地区の被害は甚大です。
ウチはたまたま運が良かっただけで、床上浸水してしまったお家、収穫直前だった苺がハウスごと流された農家さん、学校にも土砂が流れ込んでいたり、困っている方が沢山いらっしゃいます。

台風当日は消防団で朝まで動いていました。
近所の家の軒先に吸水ホースを突っ込み、ひたすら川へ向かって放水しました。
消防車を火を消す以外の目的で使ったのは初めての経験でした。

昨日今日は近所の被害が大きかったお家の片付けを手伝っていました。
南摩、粟野も例に漏れず少子高齢化が進んでいますので、水を吸った畳など、重い物を運ぶのは家の人だけでは限界があります。

現場にはまだまだ人の手が必要です。
もし鹿沼、粟野に友人やお知り合いがいて、近日中に時間がとれる方は、ぜひ何か出来ることがないか連絡してあげてください。
知り合いはいないけど力になりたい、と思ってくださった方は、鹿沼市のボランティアセンターへ問い合わせてみてください。
もちろん他の市町村でも人手は必要でしょう。
自分が行ける範囲、少しでも縁のある場所、モチベーション高く活動できる現場を選ぶのがいいと思います。とにかく出来る事から少しでも動きましょう!


2019年9月28日土曜日

農業は風景に大きな影響を与える。

近所の大規模農家さんがメインの作付けを蕎麦に代えたら、
9月の南摩はどっちを向いても白い花畑が見えるようになりました。
ミツバチも増えたように思えます。 

「農業は風景に大きな影響を与える。」
この事は以前から意識していましたが、今年の蕎麦畑にはかなり心を動かされました。

特に南摩のような田舎では、田畑をどう使うかによって景色が大きく変わります。
放置されて荒れたり、銀色のパネルが並んだ電気畑になったりするのはやっぱり嫌で、
 美しいと思える今の南摩の景色を、この先も長く守っていきたい。

パン屋もカフェもおでん屋も学校給食も、もちろん他にも目的はあるけれど、景色を守る為の手段の一つだということを、なにかを判断する際の選択の基準に据えています。

10年後、20年後、もっと先、南摩にどんな風景が広がっているか。
暮らしたい場所であり続けて欲しいです。


2019年9月11日水曜日

学校給食地産地消化 進捗報告


今日までマイチャレンジで地元、南摩の子が来てくれていました。
学校給食用のじゃがいもを一緒に洗浄し、納品。
明日からの給食で自分で食べるじゃがいもを、給食を作ってくれる方に自分で届ける。
いい思い出になってくれたらいいなぁと思います。  

というわけで、しばらく報告が滞っておりましたが、
学校給食プロジェクトは第二章に入り、二学期の南摩の給食はじゃがいもが自給率100%になっています。 
今後のプロジェクトの方向性ですが、地域の田畑を有機的に循環させていくには、多くの方々の手が入る事が望ましいと考えています。 
この事は以前から変わりませんが、そこに至る為の手段を再検討しています。

以前はポイント制を検討していましたが、やっぱり現金、即金の方がみんな分かりやすくて参加しやすくなるんじゃないかなぁと思いました。
そこで目標を、《時給1,000円で誰でも参加できる畑アルバイト》を仕組み化し、作業毎に参加者を募って田畑を循環させることにしようと考えています。 
その為には事務局の整備や、生産効率の向上、時給を払えるだけの利益を上げる加工品の開発、決算システムの検討など、課題が色々と見えてきました。 
あと何より僕に時間が無さ過ぎるのが最大の課題でしょうか。
もっとうまく時間を使わないとなぁ。 

一つひとつ楽しく解決していけたらいいなと思います。
ご意見やアドバイスいただける方、何でもありがたいです。ご指導ご鞭撻の程よろしくお願いいたします。

2019年8月31日土曜日

夏休み2019 ②


ミッキーの時と同様に、完全に引いている娘。
今年の夏休みはこの顔が多めだったな。笑

今年二回目の夏休みは、那須、黒磯へ。
那須どうぶつ王国のバードショー、子供たちはあまり見てくれなかったけれど、
僕と妻は大興奮の内容だった。
エンターテインメントとしての完成度がとても高かった。
まだ観ていない人にはぜひ観に行ってほしい。

湯気のおでんを食べてもらいたくて、
修業時代から今でもお世話になりっぱなしのKANEL BREADのオーナーご夫妻におでんを届けて、一緒に食べた。
オーナーご夫妻と一緒に過ごす時間はとても楽しい。
僕も妻もこの時間が大好きだ。
さらに、会うたびに、その時々の僕へ大切な気づきを与えてくれるような金言が出てくる。もっと学ぼうと思わせてくれる。

やる気を新たに、夏休み明けの営業を迎えられそうだ。